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サークル名:
コズアワプラユニ
サークルマスター:
紺青 龍

12/30 WED
コミックマーケット77
東4ホール/ロ-21b
※このイベントのみ[DA-Dolce Assortito-]のサークル名で参加してます。

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クリスマスプレゼント!

ロキンザを待ってくださってる皆様にクリスマスプレゼントです!

話の時間軸は本編(冬の新刊)終盤の一年後。
ネタバレ…ってほどではないと思いますが、本編を見てくださるといっそう楽しい感じです。



それではどうぞ!




シックなはずの店内が華やかに飾られて、カウンターの脇には白銀のスパイラルツリー、入り口にはリボンが結ばれたリース。
照明はいつものままのはずなのに店内がやけに明るく見えた。


12月24日。
渋谷の駅から少し歩いた小ぢんまりとしたBar。
それだけで、客が来そうなもんなのに、あいにく今日は貸切札がかけられている。


一ヶ月間に、ひょんなハヤトの思いつきで持ちかけた、それに二つ返事で応じたオーナーのコロネロとラルはやっぱりどこか普通の経営者とは違う。


いつもならテーブル席が並ぶ一階の店内を片して、広々としたそこには8人がけだか10人がけのソファセットとローテーブル。
2階の個室からばらして降ろした時は腕が外れるんじゃないかって本気で思ったのだ。

ローテーブルには酒とつまみが並べられて、ソファの上にはもう半分酔っ払ってるんじゃないかってくらいの面々。



「はぁっ!? んじゃおまえ去年のクリスマスは一人ぼっちだったわけっ?」
アイドルがっ? ありえねぇーっ。と、ハヤトがソファの上で酒の入ったグラスを引っ繰り返しそうなほど笑い転げてる。
「マジ、くらーい自宅で買い置きのワインラッパ飲みして終わり」
本当だと告げれば、ハヤトはさらに笑い続ける。
「暗いね」
その原因となったはずの恭弥はしれっとした顔で、シャンパンに口を付けた。
「それ、誰のせいだと思ってるんだよ?」
おまえが俺を追い出さなかったらケーキと鳥の丸焼きを用意してたんだぜ、と言えば、
「さぁ?」
恭弥は知らん顔だ。

そんな顔の向こう、ひょいと視線をやったその先のカウンター席では山本がラルに昨年の打ち上げの際に自動的にキープになった馬鹿高い酒の支払いを迫られている。
そして、その反対側のカウンター席には顔を寄せて楽しそうにしている骸と彼の妹――凪。半年前ほどにプローモーションビデオ以外のTV露出を一切しないという条件でデビューした歌姫クロームが来ていた。

店内の大型モニターには元アルコバレーノのサポーター・マーモンの手によって俺達の曲のプロモーションビデオが代わる代わる流されている。
リボーンは一人がけの席に陣取って水のように酒をかっ喰らってるし、その少し離れた先ではマーモンと同じく元アルコバレーノのサポーターのスカルがなにやらパソコンと機材類のチェックで一人走りまわっていた。
姿の見えないコロネロは厨房に一人こもりきりで、リョウヘイのほうは仕事が終わってもうそろそろだとさっき連絡入った。


「ラル、手伝ってくれっ」
厨房からのコロネロの声にラルがカウンターを離れると、カードを切られた山本がすかさずキープとなった酒を抱えてソファに転がり込んできた。
「どーしよこれ」
ハヤトの隣を当たり前のように陣取って、その肩を抱きながら抱えてきた酒を見せびらかす。
「責任取れよ」
男らしくな、とハヤトは取り合わずその酒瓶を奪い取ると容赦なくあけてグラスに注ぎ始めた。
「はじめから腹上死にしておけば一本で済んだだろ?」
聞いてなかったと思われたその昨年のやり取りをハヤトはどうやらバッチリ聞いていたようで、
「えーっと、すまん」
ははは、と誤魔化すように笑った山本はやっぱり殴られていた。
「ちょっと、テーブル空けろ」
上から降ってきたラルの言葉にそちらを向けばウエディングケーキ並みの三段に積み上げられたケーキと鳥の丸焼きが運ばれて、
「すんげー」
目をキラキラと輝かせ始めたハヤトにコロネロが苦笑してる。
「俺の自信作だ」
喰え、と言った所で店の電話が鳴り響いた。
眉を顰めて受話器を取ったラルはすぐにその表情を戻して、
「誰か開けてやれ、リョウヘイだ」
その言葉に俺は席を立つ。
俺の肩を背もたれにしていた恭弥がずるりとソファを滑ったけれど、幸いシャンパングラスはテーブルの上。気にせずドアを開ければ冷たい空気と共に鼻の頭を赤くしたリョウヘイが転がり込んできた。
「雪が降りそうだぞっ」
わくわくと告げたリョウヘイの声に凪がそわそわと窓を探して店内を見回す。
「そう、言いながら毎年降らないじゃないですか」
どうやら付き合いの長い骸が今年も無理そうだと首を振った。
「ん、そろそろか?」
店の壁にかけられた時計を見て、山本が立ち上がる。
ハヤトも立ち上がって伸びをすると部屋の隅にまとめられていた機材を動かし始める。
テーブルをずらして、ソファの前にマイクを三本。カウンターのスツールをいくつか持ってきて周囲に並べて、反対側ではリョウヘイが先に店に送ってあったドラムセットを組み始める。スカルが撮影用のカメラをセットして、マーモンと共にチェックを入れながらケーブルを繋ぎ始めた。
リボーンは相変わらず何もせずにふんぞり返っているし、恭弥はのんびりと一人切り分けられた鳥を食みながらソファに崩れたまま。
「そろそろ映るぜ」
カメラがまわされ始めて、プローモーションを流していた大型モニターには店内の様子が映し出されていた。
「立ち位置は?」
「このままでいいよ」
ハヤトの問いに動く気がないのか恭弥は言い切って、俺に店に持ち込んだギターを持ってこさせる。今日は、いつものフォンのエレキギターじゃなくて、真っ白いアコースティックギター。
「じゃ、位置について」
号令をかけたのは山本。
マイクの前には右から恭弥・俺・ハヤトの順。ソファの左隣には骸、反対側にはリョウヘイと山本と、そしていつの間にかベースを取り出したリボーン。
「まだ待てって」
空きっぱなしで少し寂しかった左側にはキーボードを運んできたコロネロがそのまま収まって、
「え、ラルさんじゃないの?」
気が付けばラルはクロームと一緒にどこかに消えていた。
「俺だって弾けるんだって!」
任せとけ、とコロネロは笑った。
「スカル」
リボーンの低い声に呼ばれて、スカルがびくりと肩を揺らす。アルコバレーノ時代にさんざんパシられたんだと聞いたその記憶が拭えないのかスカルは始終皆の顔を伺っていた。
「あと少しだからよ……っと、繋がったぜっ」
繋げた先は某有名動画サイト。
そこからの世界に向けてリアルタイム発信をするのだ。
「おっし行くぜー」
ハヤトの声に動画サイトへ映像が流し込まれた。
パソコン画面でそれを確認していたマーモンがゴーサインを出して――――。



   +++++



「Merry Merry Christmas! 世界中の愛する人々に<HHD>が送るとっておきのPresent! 恋人や家族で過ごすあなたも、お一人様のあなたにも――」

「「「「「「「Happy Christmas!!!!!!」」」」」」」

持たされていたクラッカーを思い切り引いて弾けさせると、それに被さるように前奏が始まる。
1曲目のチョイスはかの有名な平和を愛したアーティストのクリスマスソング。
前半のリードが俺で、隣でソファに座ったままギターを奏でる恭弥の声が酷く優しく聞こえた。
コーラスが加わった時点でマイクが足りてないような気がしたけれど、それはそれで良いかな、とか適当なことを考えて、リードをハヤトに引き渡す。
最近優しいバラードを歌うようになったハヤトは、激しい歌を歌ってる時が嘘みたいな声で優しく歌詞をなぞっていった。

最後のコーラスを歌いきると、カメラのフレームの外から凪と手を繋いだラルがこちらへ割り込んでマイクを奪い、コロネロがすかさず次の曲の前奏を始めた。
2曲はこれもまた有名な女性歌手のアップテンポなクリスマスソングで、出だしだけスローテンポなそこを天使の声と言われる凪が優しく歌い上げて、終わると同時にラルがリズムを刻みだした。
響いた声はアルコバレーノのCDでもコーラスでしか聴けなかった力強い音。
ラルと凪は時折目を合わせて、楽しそうに歌う。

その脇から待ちのハヤトの手が伸びて切り分けたケーキの皿をテーブルから持ち上げると、同じようにパートのない俺に押し付ける。
「……っと」
寄越されたケーキを口に含んだら、ギターを放棄した恭弥が再びシャンパングラスを手に取った。
反対側の山本を見ればその様子に苦笑してる。ハヤトが楽しそうにその口へ切り分けた手羽先を突っ込んで、これがテレビだったら、すぐさま放送が打ち切られていそうな感じ。

そして曲が終わると、ハヤトがマイクを取り返して、
「ようこそ皆様<HHD>のクリスマスパーティに! 事前予告も事前予約も一切ナシっ! これを見られたあんたはすげぇ幸運!」
笑いながら勝手にMCを始める。
「ちなみに事務所にナイショだからたぶん明日あたり全員会議室で正座させられて怒られるのなっ」
かじり掛けの手羽先を口から離した山本があとから続けて、
「じゃ、ゲスト紹介をちょっとだけ――天使の歌声クロームと元アルコバレーノのラル、同じくリボーンとコロネロ」
カメラに向かってそれぞれ反応を返した後、
「それじゃ、ヒバリ行くか?」
一際大きく切り取ったケーキのイチゴを一人で頬張っていた恭弥にハヤトが問いかけると、恭弥は口元にクリームをつけたまま頷いた。
そして、ハヤトは俺にマイクを押し付ける。
「えっと……それじゃ、最後の曲は12月22日に発売しました新曲――」
口元のクリームを拭ってイチゴを飲み下した恭弥がマイクを奪って曲名を告げた。

その瞬間、前奏がはじまった。

俺のパートのはずの歌い出しを恭弥が奪い取って、順番通りハヤトが続く、当然のようにその次、本来なら恭弥が歌うパートを寄越された。
レコーディングの時にさんざん、歌えていないと貶されて、結局配置換えになったその部分を押し付けられて、思い切り甘い声で歌えば隣のハヤトが演奏中だというのも忘れて爆笑し始めた。
おまえみたいに上手く鳴けるわけがないとばかりに恭弥を睨めば、知らん顔で、もうサビはやけくそだ。



一年前、暗い部屋で一人で、恭弥のことを想っていたのが嘘のよう。


目の前が、まるで紙くずの雪が降ってるみたいにキラキラと輝いていた。




Merry Merry Christmas to you!






+++++

イメージソング
1.ジョ/ンとヨー/コの有名な曲です。
2.マラ/イアさんの有名な曲。
3.ラ/ルクのクリスマスソング。

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